02:江戸硝子
江戸切子の基材となるのは「江戸硝子」である。これは「生地」と呼ばれ、その多くは透明なガラスに色ガラスを被せたもの。ガラスに色を付けるためには、金や銅、コバルト、といった鉱物が使われるが、その配合は工房ごとに違うという。<熊倉硝子工芸>の生地の仕入れ先は、千砂都さんの祖父の代から江戸川区のひとつの工房のみに限定している。生地工房は<熊倉硝子工芸>でされるデザインに応じて生地をつくる。
<熊倉硝子工芸>で扱っている生地の組成は、すべてソーダガラスである。
カットグラスでよく用いられているのは、クリスタルガラス。これは粘りがあり加工しやすいのだが、その性質は含まれる鉛によるものである。しかし、昨今、鉛の排出が環境問題として取り沙汰されるようになった。カットの際に出るガラス粉、ユーザーが割ってしまったガラスの処理など、所々の問題を抱えている。
ソーダガラスはクリスタルガラスに比べて割れやすく、カット・磨きにも細心の注意を要するが、<熊倉硝子工芸>では、昔からの伝統を守りソーダガラスを使い続けてきた。伝統を守り続けた結果、環境負荷の少ない工房となっている。
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