製造業とユーザーをつなぐファクトリープロジェクト
平成19年度 東京都ものづくり新集積形成事業支援対象グループ

熊倉硝子工芸

07:手磨き

07:手磨き

カットが終わると、ある部分にマジックで印が付けられる。なぜ印を付けるのだろうか。

カットにはダイヤモンドの砥石を使うため、カットした部分はつや消しになる。そこを透明にするためには二つの方法がある。そのひとつはガラスを溶かす薬品、硫酸とフッ化水素の混合液に浸ける方法。これはガラス工芸の本場ヨーロッパから伝わった方法で、一度に大量の製品を処理することができる。

もうひとつの方法が「手磨き」。粘土質の研磨剤を使って磨いていく方法だ。カットした模様の線ひとつひとつをもう一度なぞるように磨いていくのだから、大変な労力と時間がかかる。ワイングラスひとつを磨き上げるのに30分ほど。

そのかわり、微細であれガラス表面を溶かす方法と違い、カットのエッジは鋭く残り、色ガラスの色彩がくすむこともない。さらに、ひとつの製品のなかで透明な磨き仕上げとつや消し仕上げを併用することができる。
カット後の印は、透明に磨く部分を指示するものだったのだ。

磨き手は入門8年目の若者が担当していた。粘土質の不透明な磨き粉の中で磨き上がりを知るのは、指先の感触だと言う。

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